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教育資金ピーク期へ向けた積立NISAポートフォリオ最終調整戦略:大学入学まで5年のケーススタディ

Tags: 教育資金, 積立NISA, ポートフォリオ, リバランス, 大学資金

教育資金ピーク期に向けた積立NISAポートフォリオ最終調整の重要性

お子様の成長に伴い、教育資金が必要となる時期は刻々と近づいてまいります。特に大学入学というライフイベントは、まとまった資金が必要となる教育資金の大きなピークの一つです。これまで積立NISAなどを活用して計画的に資産形成を進めてこられた皆様にとっても、この時期が近づくにつれて、運用戦略は「積極的に増やす」フェーズから「守りながら、必要な時期に必要な資金を確保する」フェーズへと移行する必要が出てきます。

教育資金の準備期間が残り少なくなった状況での資産運用は、市場変動による元本割れリスクをいかに抑えるかが重要な課題となります。積立NISAで積み上げてきた大切な資産を、教育資金として必要な時に確実に使える状態にしておくためには、ポートフォリオの戦略的な「最終調整」が不可欠です。

本稿では、大学入学まであと5年程度という状況にある架空の家庭を例に、積立NISAを核とした教育資金ポートフォリオの最終調整に関する考え方と具体的なアプローチについて考察いたします。

ケーススタディ:大学入学まであと5年の家庭の状況

ここでは、架空のA様ご家庭を例に考えてみます。

A様ご家庭は、これまでの積立により積立NISAと特定口座で合計約900万円の運用資産を築いています。預貯金500万円と合わせると、現在の金融資産は約1,400万円です。目標とする教育資金800万円に対して、現時点の資産総額では余裕があるように見えます。しかし、運用資産の大部分は株式投信であり、市場変動リスクを考慮すると、このままのポートフォリオで5年後を迎えるのはリスクが高いと言えます。必要な時に資産が大きく目減りしている可能性も否定できません。

最終調整戦略の検討:リスク低減と資金確保へ

A様ご家庭のような状況で、大学入学までの残り期間が5年となった場合、積立NISAポートフォリオおよび金融資産全体について、以下のような視点での最終調整が考えられます。

  1. リスク資産比率の見直し:

    • 残り期間が短いほど、市場の短期的な下落が回復する前に資金が必要となる「期間リスク」が高まります。このリスクを低減するため、ポートフォリオ全体における株式などのリスク資産の割合を段階的に引き下げることが一般的な戦略です。
    • 現在のA様ご家庭の運用資産(積立NISA 600万円 + 特定口座 300万円 = 900万円)の大部分は株式投信です。これを、教育資金が必要となる時期に合わせて、より安全性の高い資産(預貯金、債券、MMFなど)へシフトすることを検討します。
  2. 積立NISA口座内での対応:

    • 積立NISA口座内の資産は、非課税で売却できるメリットがあります。今後の相場見通しやリスク許容度を踏まえ、必要な資金の一部、またはリスクを抑えたい部分について、非課賃口座内で売却し、現金化することを検討します。
    • 売却によって得た資金は、銀行預金など、より安全性の高い場所へ移すのが適切です。
    • また、今後の新規積立(もし継続している場合)については、リスクの低い投資対象に変更することも選択肢となります。ただし、積立NISAは非課税枠に限りがあるため、将来的な再投資の可能性なども考慮し、慎重に判断が必要です。新NISA制度の場合、年間投資枠が拡大されましたが、それでも限りある非課税枠を最大限に活かすか、短期的なリスク回避を優先するかは、家計全体の資金計画とリスク許容度によります。
  3. 特定口座・預貯金との連携:

    • 積立NISAだけでなく、特定口座の資産や預貯金も含めた金融資産全体でポートフォリオとして捉え、リスク調整を行います。
    • A様ご家庭の場合、預貯金が500万円あります。必要な教育資金800万円のうち、入学金約100万円と初年度の費用約175万円、合計275万円程度を、まずこの預貯金で賄う計画を立てることも可能です。これにより、運用資産を取り崩すタイミングを遅らせる、あるいは取り崩す金額を減らすことができます。
    • 特定口座の資産は、売却益に税金がかかります。どの資産(積立NISA、特定口座、預貯金)から、どのタイミングで資金を捻出するのが税務上有利か、運用状況や税制を考慮してシミュレーションを行うことが望ましいです。一般的には、非課税である積立NISAからの取り崩しを優先する、あるいは税金がかかっても特定口座で含み益が少ない資産から取り崩す、といった考え方があります。
  4. 具体的なポートフォリオ再構築例:

    • 例えば、大学入学までに必要な約800万円のうち、5年後の資金需要に合わせて、リスク資産(株式投信)の比率を段階的に減らし、安全資産(現金・預金、低リスク債券投信など)の比率を高める目標を設定します。
    • 現在の運用資産900万円のうち、仮に5年後に必要な資金(800万円の一部)を賄うために、最終的にリスク資産比率を30%程度まで引き下げる目標を立てた場合、運用資産全体で約270万円をリスク資産として維持し、残りの約630万円を安全資産にシフトするというイメージになります。
    • このシフトを一度に行うのではなく、例えば毎年、あるいは市場状況を見ながら数年に分けて段階的に行うことで、急激な相場変動による影響を緩和する工夫も考えられます。

実行と継続的な見直し

ポートフォリオの最終調整は、一度行えば完了というものではありません。市場は常に変動しており、ご家庭の経済状況や教育資金の必要額なども変化する可能性があります。

まとめ

教育資金、特に大学入学というピーク期が目前に迫った状況では、積立NISAを中心に築いてきた資産を守りながら、必要な時期に確実に資金を捻出するための戦略的なポートフォリオ調整が極めて重要になります。これまでの運用で得られた利益を確定させ、リスク資産の比率を適切に引き下げることで、市場の短期的な変動に左右されにくい体制を構築することができます。

ご自身の積立NISA口座の状況、特定口座を含めた他の金融資産、そして具体的な教育資金計画を総合的に把握し、数年後の資金需要に向けて計画的な最終調整を実行してください。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家の意見を参考にすることも、より安心感のある教育資金計画を実現するために有効な手段の一つと言えるでしょう。