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教育資金ピーク分散を見据えた積立NISA戦略:複数子を持つ先輩パパママの計画事例

Tags: 教育資金, 積立NISA, 複数子, ピーク分散, ポートフォリオ, 事例, 資産形成, 特定口座

はじめに

教育資金の準備は、お子様の人数や年齢差によってその計画の立て方や実行の難易度が異なります。特に、複数のお子様がいらっしゃるご家庭では、それぞれのお子様の進学時期が異なるため、教育資金が必要となるピーク時期が分散する傾向にあります。このピーク分散を考慮した資産形成戦略は、単一のお子様の場合とは異なる視点や工夫が求められます。

本記事では、複数のお子様がいらっしゃるご家庭が教育資金のピーク分散にどのように備え、積立NISAをその戦略の中心に据えつつ、他の資産形成手段とどのように連携させているのかについて、具体的な事例(架空設定)を通して解説します。既に積立NISA等での資産形成を開始されている読者の皆様にとって、ご自身の計画を見直す上での一助となれば幸いです。

複数子家庭における教育資金計画の特性

複数のお子様がいらっしゃる場合、教育資金が必要となるタイミングは単純に倍になるだけでなく、時間軸上で分散します。例えば、5歳差のお子様がいる場合、上のお子様が大学入学でまとまった資金が必要になった数年後に、下のお子様も同様に資金が必要になる時期が訪れます。この時間差があることで、それぞれの資金に対する準備期間やリスク許容度が異なってきます。

上の子向けの資金は準備期間が相対的に短いため、より保守的な運用や計画的な取り崩しが必要になる一方、下の子向けの資金は準備期間が長く取れるため、一定のリスクを取りながら積極的な運用を行う余地があるかもしれません。このように、ピーク時期の分散を考慮した上で、資金ごとに異なるアプローチを取ることが、効率的かつ現実的な教育資金準備につながります。

事例紹介:ピーク分散を見据えた積立NISA戦略と他の資産活用

ここでは、大学進学までを主な教育資金のピークと考え、お子様2人(5歳差)を持つ先輩パパママの架空の計画事例をご紹介します。

ご家庭の状況(架空設定):

教育資金計画の全体像:

このご家庭では、長子が大学入学する約5年後、次子が大学入学する約10年後にそれぞれまとまった資金が必要になります。計画の軸は積立NISAとしつつ、他の資産も教育資金として柔軟に活用できるよう準備しています。

積立NISAの運用方法と思考プロセス:

このご家庭では、積立NISAのポートフォリオ構築にあたり、以下のような点を考慮しています。

  1. 期間の違いの考慮: 長子向けの資金(約5年後が必要時期)と次子向けの資金(約10年後が必要時期)では、リスク許容度が異なります。積立NISA口座全体としては一つのポートフォリオですが、意識の上では期間の異なる資金が混在していると考え、全体のリスク水準を決定しています。
  2. ポートフォリオ構築:
    • 主に、国内外の株式インデックスファンド(例:全世界株式、S&P500など)と国内外の債券インデックスファンドを組み合わせています。
    • 長子向けの資金は比較的短期であるため、債券や低リスク資産の比率をやや高めに設定しています。例えば、積立NISA口座全体のアセットアロケーションとして「株式60%:債券40%」のような比率を設定し、リスクを抑えながら運用しています。これは、期間の長い次子向けの資金も含めた全体での判断であり、長子向けの資金のみを切り出せば、より債券比率が高くなるイメージです。
    • 具体的な銘柄としては、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」などを選択し、低コストで分散されたポートフォリオを構築しています。
  3. リバランスの考え方:
    • 年に1回程度の定期的なリバランスを実施しています。ポートフォリオが目標とする資産配分から大きく乖離した場合に、売買によって比率を調整します。
    • 加えて、長子の大学入学時期が近づくにつれて、積立NISA口座内のリスク資産(主に株式)の比率を徐々に引き下げる計画です。例えば、入学の3年~5年前からリスク資産の比率を段階的に減らし始め、入学時にはより保守的な資産構成にする、といった「グライディングパス」のような考え方を取り入れています。これは、必要な資金の確保を最優先するための措置です。

積立NISA以外の資産活用:

実践へのアドバイス

複数のお子様の教育資金準備においては、以下の点を考慮することが有効です。

  1. 子の年齢差に応じた資金計画: それぞれのお子様の進学時期までの期間を正確に把握し、それぞれの期間に応じた目標額と資金準備方法を立てることが出発点となります。必要資金のピークがいつ訪れるかを可視化することで、リスクの取り方や必要な積立額が見えてきます。
  2. 積立NISAの活用: 積立NISAは非課税で運用益が得られる強力な制度ですが、非課税投資枠には上限があります。計画的な積立を行い、非課税メリットを最大限に活用することが重要です。
  3. ポートフォリオの調整: 子の進学時期が近づくにつれて、必要な資金に対するリスク許容度は低下します。積立NISA口座内や、他の資産との合算で、リスク資産の比率を計画的に引き下げていく検討が必要です。これは定期的なリバランスの範疇を超える、目標達成に向けたリスクコントロールの側面が強い調整となります。
  4. 他の資産との連携: 積立NISAだけで目標額すべてを準備できるとは限りません。特定口座での運用、現金・預金の確保、保険の活用、そして必要に応じた借入(教育ローン等)の検討など、複数の手段を組み合わせて全体として教育資金を確保するという視点が重要です。
  5. 定期的な見直し: 教育資金計画は一度立てたら終わりではありません。お子様の成長、ご自身の収入や支出の変化、金融市場の動向などに応じて、定期的に計画を見直し、必要に応じて修正を行うことが不可欠です。特に、大学入学の数年前からは、より綿密な計画と進捗確認が求められます。

まとめ

複数のお子様がいらっしゃるご家庭の教育資金準備は、必要となる資金のピーク時期が分散するという特性を踏まえた計画が必要です。積立NISAは教育資金準備の強力なツールとなりますが、その運用は単に積み立てるだけでなく、子の進学時期までの期間を考慮したポートフォリオ構築、計画的なリバランス、そしてピーク時期が近づくにつれてのリスク資産比率の調整といった工夫が有効です。

また、積立NISAだけでなく、特定口座、現金・預金、必要に応じた教育ローンなどの他の資産や制度も柔軟に組み合わせ、全体として目標とする教育資金を準備するという視点が重要です。先輩パパママの事例が示すように、計画的なアプローチと定期的な見直しが、複数子の教育資金準備を成功させる鍵となります。

ご自身の状況に合わせて、最適な教育資金計画を立て、実行していただければと思います。