教育資金と老後資金の両立:先輩パパママの積立NISA活用戦略事例
40代から考える、教育資金と老後資金の両立戦略
お子様の成長に伴い、教育資金の準備は多くのご家庭にとって喫緊の課題となります。一方で、ご自身の老後資金に対する備えもまた、同じく重要なテーマとして意識される頃合いかと存じます。特に40代半ばを迎えられる世代においては、これら二つの大きなライフイベントに向けた資金計画をいかに両立させるかが、資産形成における重要な論点の一つとなります。
積立NISAは、教育資金、そして老後資金、いずれの目的にも有効な資産形成ツールとして広く活用されています。しかし、限られた資金や時間をどのように配分し、それぞれの目標達成を目指すかは、ご家庭の状況や考え方によって異なります。ここでは、既に積立NISAを活用しながら教育資金と老後資金の両立に取り組まれている先輩パパママの具体的な戦略事例を通じて、皆様の計画を見直す上でのヒントを提供できれば幸いです。
なぜ教育資金と老後資金の両立が課題となるのか
教育資金は、お子様の進路によって大きく変動する可能性がありますが、多くの場合、進学時期という明確な期限が存在します。特に大学進学費用はまとまった金額が必要となるため、その時期から逆算して計画的に準備を進める必要があります。
対して老後資金は、目標とするリタイア時期や老後の生活設計によって必要な総額が異なりますが、一般的には教育資金よりもさらに長期にわたる運用期間を確保しやすい資金と言えます。しかし、公的年金制度への不安や人生100年時代を見据えると、十分な自助努力が必要となります。
40代は、教育資金の本格的な支出が目前に迫る一方、老後資金準備のラストスパートも視野に入れる必要がある時期です。この両者に対し、収入の中からどのように資金を捻出し、積立NISAをはじめとする金融資産をどのように位置づけ、運用していくかが、バランスを取る上での課題となります。
事例に学ぶ:積立NISAを活用した具体的な戦略
ここでは、架空のケースではありますが、教育資金と老後資金の両立を目指す40代の会社員管理職のご家庭の事例を基に、具体的な積立NISAの活用戦略を見ていきます。
【モデルケース】
- 夫:45歳、会社員(管理職)
- 妻:45歳、会社員
- お子様:1人(現在12歳、中学入学を控えている)
- 世帯収入:高め(手取り年収 約1,000万円)
- 現在の金融資産:預貯金 約800万円、積立NISA(夫婦)評価額 約1,000万円、企業型DC/iDeCo 約1,500万円
- 目標:お子様の大学費用(私立文系500万円+仕送り等300万円 = 計800万円を想定)を確保しつつ、夫婦でゆとりのある老後(退職後30年間で5,000万円を別途確保を想定)を送るための資産形成。
【積立NISAの活用戦略】
このご家庭では、積立NISAの運用を教育資金と老後資金の両方の目標に紐付けて行っていました。
-
積立額と目標の明確化:
- 積立NISA(夫婦2人分):年間積立上限額240万円を継続。運用益も含めて、子供が大学入学する7年後(夫52歳)までに評価額が約2,000万円程度に達することを想定。
- この積立NISAの評価額のうち、約800万円を教育資金用資産と位置づけ、残りを老後資金のコア資産とする。
- 企業型DC/iDeCoは、非課税期間終了後も運用を続け、完全に老後資金として確保。
- 預貯金は当面の生活防衛資金としつつ、一部は教育資金のショートターム資金(高校入学費用など)に充当予定。
-
ポートフォリオの考え方:
- 積立NISA全体としては、目標時期(教育資金:7年後、老後資金:20年後以降)の異なる資金が混在しているため、リスク管理を意識。
- 投資対象は、教育資金の比重が比較的短期であることから、市場全体に分散投資するバランス型ファンド(例:株式50%・債券50%程度)や、先進国株式インデックスファンドを中心に構成。極端なハイリスク商品は避けています。
- 具体的には、夫婦それぞれの積立NISA口座で、A氏は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、B氏は「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」といったように、異なるインデックスファンドを積み立てることで、世帯全体としてリスク分散を図っていました。
-
リバランスの考え方と頻度:
- 教育資金の目標時期が近づくにつれて、リスク資産の比率を徐々に引き下げる方針。
- 具体的には、お子様が高校生になる頃(3年後)から、積立額の一部を国内債券ファンドやバランス型ファンド(債券比率高め)に変更するか、あるいは積立を継続しつつも、評価益が出ている部分を現金化して預貯金に振り替えるなどの検討を開始する計画でした。
- 定期的なリバランスは、年に1回程度、夫婦でポートフォリオ全体の資産配分を確認し、必要に応じて行う程度。目標時期が近づくにつれて、より頻繁な見直し(半年に1回など)を検討する予定です。
-
資金の取り崩し計画(教育資金):
- 積立NISAの評価額から教育資金800万円を取り崩す際は、非課税で引き出せる積立NISAのメリットを最大限に活用。
- 一度に全額を引き出すのではなく、大学入学時、在学中の授業料支払い時など、必要に応じて複数回に分けて引き出す計画。これにより、残りの資金は引き続き非課税運用を継続できます。
- 引き出し順序は、教育資金として確保しておいた「元本部分」を優先的に引き出す、あるいは評価益が多く出ているファンドから引き出すなど、税務上の有利不利(積立NISAの非課税メリット vs 特定口座での課税など)を考慮し、状況に応じて判断する方針でした。
戦略を成功させるためのポイント
上記の事例から、教育資金と老後資金を積立NISAで両立させる上で、いくつかの重要なポイントが見えてきます。
- 目標の明確化と数値設定: 教育資金、老後資金それぞれに「いつまでに」「いくら必要か」という具体的な目標を設定することが出発点となります。これにより、毎月の積立額や必要な利回りが逆算でき、現実的な計画が立てやすくなります。
- 資産の役割分担: 保有している金融資産(積立NISA、特定口座、iDeCo、預貯金など)それぞれに、教育資金用、老後資金用、予備資金用といった役割を持たせることで、資金管理がしやすくなり、目標時期に応じたリスク管理を行いやすくなります。
- 目標時期に応じたリスク調整: 教育資金のように比較的目標時期が近い資金は、市場変動の影響を受けにくいよう、目標時期が近づくにつれてリスクを抑えた運用へとシフトしていくことが一般的です。一方、老後資金のように長期で運用できる資金は、ある程度のリスクを取ることで高いリターンを期待できる可能性がありますが、ご自身の許容度を超えない範囲で行うことが重要です。
- 定期的な見直しと柔軟性: ライフステージの変化(お子様の進路変更、収入や支出の変化など)や市場環境の変化に合わせて、計画やポートフォリオを定期的に見直すことが不可欠です。特に教育資金は、進路によって必要額が大きく変わる可能性があるため、お子様の成長に合わせて計画をアップデートしていく柔軟性が必要です。
- 夫婦間のコミュニケーション: 資産形成の目標や計画、運用方針については、ご夫婦間でしっかりと話し合い、共通認識を持つことが非常に重要です。
まとめ
教育資金と老後資金の両立は、多くの40代ご家庭が直面する課題ですが、計画的なアプローチと積立NISAの効果的な活用により、十分実現可能な目標です。他のご家庭の事例は、あくまで一つの参考例であり、ご自身の状況に合わせてアレンジする必要があります。
ご自身の世帯状況、リスク許容度、目標時期などを総合的に考慮し、資産形成計画を定期的に見直しながら、教育資金と老後資金、両方の目標達成を目指していただければと存じます。