共働き世帯に学ぶ教育資金準備:積立NISAを活用した効率的な資産形成戦略
共働き世帯における教育資金準備の重要性
お子さまの教育資金準備は、多くのご家庭にとって重要なライフイベントの一つです。特に共働き世帯では、世帯収入が比較的高い傾向にある一方で、将来的な働き方の変化(キャリアの中断や勤務時間の調整など)や、複数のお子さまがいらっしゃる場合の資金ニーズの増加といった、特有の考慮事項が存在します。
効率的かつ計画的に教育資金を準備するためには、家計全体の収支を把握し、目標額を設定した上で、積立NISAなどの資産形成制度を効果的に活用することが肝要となります。本記事では、共働き世帯が教育資金を準備する上での考え方と、積立NISAを組み込んだ具体的な資産形成戦略について考察します。
共働き世帯が教育資金計画で考慮すべき点
共働き世帯の教育資金計画では、以下の点を特に意識することが重要です。
- 世帯収入の変動リスクへの対応: 片方のキャリアチェンジや育児・介護による一時的な収入減少の可能性も考慮し、ある程度の予備資金を確保したり、リスク分散を意識した資産形成を行うことが望ましいです。
- 目標額の設定と夫婦間の共有: お子さまの人数、進路の希望(私立・国公立、文系・理系、自宅通学・下宿など)によって必要な資金は大きく変動します。具体的な目標額を設定し、夫婦間で共通認識を持つことが計画の第一歩です。
- 非課税枠の最大限活用: 夫婦それぞれが積立NISA口座を開設することで、年間80万円(2024年からの新NISAでは年間360万円、内積立投資枠120万円)の非課税投資枠を最大限に活用できます。これにより、より効率的な資産形成が期待できます。
- 児童手当等の活用: 児童手当を満額貯蓄・運用に回すなど、公的な支援制度を教育資金準備に充てることも有効な手段です。
積立NISAを活用した具体的な資産形成戦略
積立NISAは、年間一定金額までの投資から得られる運用益が非課税となる制度であり、長期・積立・分散投資に適しています。教育資金のように、目標時期が決まっている資金準備において、積立NISAは非常に強力なツールとなります。
1. 積立額の設定
目標とする教育資金総額から、現時点での貯蓄額や今後見込まれる児童手当などを差し引き、不足分を積立NISAで準備する金額の目安とします。例えば、お子さまが18歳になるまでに大学資金として500万円を目標とする場合、毎月の積立額は、運用益を考慮しつつ逆算して設定します。
共働き世帯の場合、夫婦それぞれの収入状況に応じて、積立額を分担したり、ボーナス月に増額したりといった柔軟な対応が可能です。夫婦で非課税枠を最大限活用するのであれば、一人あたり年間120万円(月10万円)の積立投資枠を意識することになります。
2. ポートフォリオの構築と銘柄選定
教育資金の目標時期までの期間によって、取るべきリスクの度合いは異なります。期間が長い場合は、比較的リスクを取りやすい株式比率を高めたポートフォリオが考えられます。目標時期が近づくにつれて、徐々にリスクを抑える(債券比率を高める、現金化を進めるなど)戦略が一般的です。
ポートフォリオ例(お子さまが10歳、目標時期まで8年として想定)
- 株式型投資信託: 全世界株式インデックスファンドやS&P500インデックスファンドなど。成長性を重視しつつ分散効果を狙います。
- 債券型投資信託: 国内債券や先進国債券のインデックスファンド。リスク抑制に寄与します。
- バランス型投資信託: 株式と債券に分散投資するタイプ。リバランスの手間を省きたい場合に選択肢となります。
具体的な銘柄選定においては、信託報酬が低コストで、運用実績が安定しているインデックスファンドを中心に検討することが推奨されます。特定の国や地域、セクターに偏りすぎないよう、グローバルな分散投資を意識することが重要です。
3. リバランスの考え方と頻度
ポートフォリオは、運用による値動きによって当初想定していた資産配分からずれていきます。このずれを修正し、目標とする資産配分に戻す作業をリバランスと呼びます。教育資金準備においては、目標時期までの期間に合わせてリスクを調整するためにも、定期的なリバランスが有効です。
- 頻度: 年に1回など、一定のタイミングで行うのが管理しやすく一般的です。市場が大きく変動した際に臨時に行うこともあります。
- 方法: 値上がりした資産クラスの一部を売却し、値下がりした(あるいは当初比率よりも割合が減った)資産クラスを購入する、または毎月の積立額を調整して比率を戻す、といった方法があります。教育資金の目標時期が近づくにつれて、株式などのリスク資産を減らし、債券や現金の比率を高める「グライディングパス」という考え方を取り入れることもあります。
より高度な資産形成のヒント
積立NISAを軸としつつ、さらに効率的な教育資金準備や資産形成を目指す場合、以下の点も検討できます。
- iDeCoとの併用: iDeCoは拠出時、運用時、受取時の税制優遇が大きい私的年金制度ですが、原則として60歳まで引き出せません。教育資金のように使う時期が決まっている資金には不向きですが、夫婦ともにiDeCoを活用することで、世帯全体の税負担を軽減し、その分を教育資金に回すといった戦略が考えられます。
- 特定口座の活用: 積立NISAの非課税枠だけでは目標額に届かない場合や、より積極的な運用を目指す場合は、特定口座を活用して追加で投資を行う選択肢もあります。この場合も、教育資金の目標時期を意識したポートフォリオ管理が重要です。
- 教育資金贈与の活用: ご両親やおじいさま・おばあさまからの資金援助が期待できる場合、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」のような制度の活用も検討できます。ただし、制度には要件や注意点があるため、専門家への相談が推奨されます。
まとめ
共働き世帯の教育資金準備は、世帯収入を活かしつつ、将来の変動リスクを考慮した計画立案が成功の鍵となります。積立NISAは、非課税で効率的に資産を増やせる強力な制度であり、教育資金準備の核となり得ます。目標設定、夫婦間での情報共有、そして目標時期に応じた適切なポートフォリオ構築とリバランスを継続的に行うことが、計画達成への道筋となります。本記事が、共働き世帯の皆さまの教育資金計画と資産形成の一助となれば幸いです。