教育資金 積立NISAのポートフォリオ、先輩家庭はこう考える:設計思想と運用事例
教育資金の準備は、多くのご家庭にとって重要な課題の一つです。中でも積立NISAは、非課税で効率的に資産形成を進められる制度として広く活用されています。しかし、その具体的な運用方法、特にポートフォリオの設計については、様々な考え方や選択肢が存在します。
本記事では、教育資金準備を目的として積立NISAを活用されている複数の先輩ご家庭の事例を取り上げ、単なる運用実績だけでなく、そのポートフォリオをどのように設計し、どのような思想を持って運用されているのかに焦点を当ててご紹介します。異なる目標時期やリスク許容度を持つご家庭が、どのような考え方で資産配分を決定し、運用に取り組んでいるのかを知ることは、ご自身の教育資金計画や積立NISA運用を見直す上で有益なヒントとなるでしょう。
事例に学ぶポートフォリオ設計の多様性
教育資金準備における積立NISAのポートフォリオ設計は、ご家庭それぞれの状況によって大きく異なります。ここでは、教育資金目標時期やリスク許容度が異なる架空の3つのご家庭の事例をご紹介し、そのポートフォリオ設計の考え方を探ります。
事例1:積極運用型(子9歳、目標まで約9年)
- ご家庭の状況: 子は現在9歳で、大学入学までの期間は約9年です。ご夫婦ともに会社員で収入は比較的安定しており、住宅ローン以外の大きな負債はありません。教育資金は大学入学時にまとまった資金が必要となる見込みですが、老後資金の準備も並行して進めています。リスク許容度は比較的高めです。
- 積立NISAポートフォリオ:
- 先進国株式インデックスファンド:50%
- 全世界株式インデックスファンド(除く日本):30%
- 新興国株式インデックスファンド:20%
- 設計思想: 準備期間が9年と比較的長期であること、及びご家庭のリスク許容度が高いことから、積極的な資産増加を目指し、株式中心のポートフォリオとしています。中でも、成長性が期待できる先進国、全世界(除く日本)、新興国の株式市場に広く分散投資することで、特定地域への集中リスクを抑えつつ、長期的なリターンを追求する考え方です。国内株式を含まないのは、勤務先の持株会などで一定の国内資産へのエクスポージャーがあることも影響しています。
- 運用方針: 積立は毎月満額行っています。リバランスは年に1回、アセットアロケーションが当初の配分から大きく乖離した場合に行う方針です。
事例2:バランス重視型(子12歳、目標まで約6年)
- ご家庭の状況: 子は現在12歳で、大学入学まで約6年です。教育資金として、大学入学時の費用に加え、在学中の生活費の一部も準備したいと考えています。収入は安定していますが、住宅ローンがあり、他の投資資産は少なめです。リスク許容度は中程度です。目標時期が近づいてきているため、元本割れのリスクを完全に避けたいわけではありませんが、過度な価格変動は避けたいと考えています。
- 積立NISAポートフォリオ:
- 全世界株式インデックスファンド:60%
- 先進国債券インデックスファンド:40%
- 設計思想: 目標時期まで6年と迫ってきていることを考慮し、事例1よりもリスクを抑えたバランス型ポートフォリオとしています。株式で成長性を追求しつつ、値動きが比較的安定している先進国債券を組み入れることで、ポートフォリオ全体の値動きをマイルドにすることを意図しています。全世界株式を選ぶことで、地域分散も図られています。
- 運用方針: 毎月の積立に加え、ボーナス時にも積立額を増額する設定にしています。リバランスは半年に1回、または市場が大きく変動した際に臨機応変に行い、資産クラスの比率を維持することを重視しています。目標時期が近づくにつれて、徐々に債券比率を高めることも検討しています。
事例3:保守運用型(子15歳、目標まで約3年)
- ご家庭の状況: 子は現在15歳で、大学入学まで約3年と目標時期が非常に近いです。教育資金はほぼ目標額に達していますが、念のため積立NISAでも準備を続けています。万が一の市場下落による元本割れは極力避けたいと考えており、リスク許容度は低いです。他の資産も含めて、教育資金はほぼ確保できている状況です。
- 積立NISAポートフォリオ:
- 国内債券ファンド:50%
- バランス型ファンド(株式・債券均等型):50%
- 設計思想: 目標時期が目前に迫っているため、資産を積極的に増やすことよりも、既にある資産の価値を維持することを最優先に考えています。国内債券は一般的に株式よりも価格変動リスクが低いため、ポートフォリオの安定性を高める役割を持たせています。バランス型ファンドも組み入れることで、わずかでもインフレに対応できる可能性を残しつつ、極端なリスクは避ける設計です。
- 運用方針: 少額での積立を継続しています。ポートフォリオ全体の価値が目標額を下回らないよう、定期的にチェックし、市場状況によっては運用益が出ている部分を換金することも視野に入れています。
事例から読み解くポートフォリオ設計のポイント
これらの事例から、教育資金準備における積立NISAのポートフォリオ設計において、いくつかの重要なポイントが浮かび上がります。
- 目標時期までの期間: 目標時期が遠いほどリスクを取りやすい資産(株式など)の比率を高め、目標時期が近づくにつれてリスクを抑えた資産(債券など)の比率を高めるという考え方が一般的です。これは、長期投資においては短期間の価格変動リスクが吸収されやすく、また複利効果を享受できる期間が長いため、積極的な運用が有利になりやすいためです。
- ご家庭のリスク許容度: 投資経験、資産状況、収入の安定性、教育資金以外の資金計画(老後資金、住宅ローンなど)によって、ご家庭ごとにリスク許容度は異なります。リスク許容度が高いご家庭はより積極的に、低いご家庭はより保守的なポートフォリオを選択する傾向が見られます。ご自身の精神的な負担を考慮することも重要です。
- 他の資産とのバランス: 積立NISAだけでなく、預貯金、学資保険、特定口座での投資など、他の資産全体で教育資金をどのように準備しているかによって、積立NISAにおけるリスクの取り方が変わります。他の資産で十分にリスクを抑えている場合、積立NISAではより積極的な運用を選択するといった考え方も可能です。
- 特定の資産クラスへの考え方: 国内外の株式、債券、あるいはREITなど、特定の資産クラスに対してどのような見通しや考え方を持つかによって、具体的な銘柄選定や比率も変わってきます。例えば、今後の世界の経済成長に期待するならば全世界株式を厚くする、国内市場に強みを感じるならば国内株式を組み入れるなど、ご自身の考えを反映させることができます。
実践へのアドバイス
ご紹介した事例はあくまで一例であり、正解はご家庭ごとに異なります。これらの事例を参考に、ご自身の教育資金計画を見直し、積立NISAのポートフォリオ設計を検討される際は、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 教育資金の明確な目標設定: いつまでに、いくら必要なのかを具体的に設定することが、ポートフォリオ設計の出発点となります。
- ご自身のリスク許容度の正確な把握: 市場変動によって資産価値がどれくらい下落しても耐えられるかを冷静に判断することが重要です。過去の市場データなどを参考に、ご自身の許容範囲を見極めてください。
- 目標時期に応じたアセットアロケーションの検討: 準備期間が短い場合は保守的に、長い場合は積極的にといった基本的な考え方を参考に、ご自身の状況に合わせた資産配分を検討してください。
- 定期的な見直しとリバランス: 一度設定したポートフォリオも、お子様の成長や市場状況の変化に応じて定期的に見直し、必要に応じてリバランスを行うことで、当初の目標に向けた運用を維持することが重要です。特に目標時期が近づくにつれて、リスク資産の比率を徐々に減らしていくことを検討すると良いでしょう。
まとめ
教育資金準備のための積立NISAポートフォリオ設計には、多様なアプローチが存在します。先輩ご家庭の事例に見られるように、目標時期、リスク許容度、そしてご自身の資産に対する考え方によって、最適なポートフォリオは異なります。本記事が、皆様の教育資金計画における積立NISAの活用方法やポートフォリオ設計を考える上での一助となれば幸いです。ご自身の状況に最適なポートフォリオを設計し、計画的な資産形成を進めていきましょう。